あなたはHeですか、Sheですか、それともTheyですか?

最近、会社のチームに新しい人が加わりました。
ブラジル出身のスポーティで、カッコいい“女性”。

日本はどうなのか知りませんが、ここ何年かのアメリカ(ロサンゼルス)では、それはそれは多様なジェンダーが社会で受け入れられるようになってきています。

私は他人が男であろうが女であろうが、あまり気にしません。ドロドロの人間関係が苦手なので、他人を思いやる心があって、きちんとした礼儀のある人であれば、ゲイであろうがなんだろうが、何でも良いと思います。

ただ…ただ、ですよ。こういうのって、もはや見た目では区別が出来なくなっているんです。
外見が女性らしいからって、その人が“She”とは限らないのです。“He”なのかもしれないし、もしくは最近頭角を現してきた“They”(ノンバイナリー)というやつかもしれません。

こういうのって、第一印象で決めつけたくはないのですが、悪気がなくても何の気なしに間違えちゃう事もなくはないと思うのです。

新しいメンバーは女性で、ゲイで、結婚していて奥さんがいます。でもそんな事は、パッと見では分からないし、初対面でそんな個人的な話もしませんよね?仲良くなって、色々と話すようになって、ようやく知っていくことだと思うんです。

それなのに、間違えられた、とか、理解されなかった、とか、悪気がなくても傷つけてしまうこともある訳です。

そんな無意味な誤解を減らすためなのか、他人にいちいち説明する手間を省くためなのか、最近はSNSの自己紹介の欄に自分が何者なのかを書いている人が多くなりましたね。私の会社でも、メールの自分の署名の部分に「名前(she/her)」とかって加えている人が多いです。ここでも垣間見えるアメリカ人の合理性、とでもいうのでしょうか。なるほどな…確かにこういうのは助かります。

このHeとかSheとかって、Pronoun、つまり自分の「代名詞」です。よくアメリカ人が会話の中で、相手のパートナーのジェンダーについて尋ねる時に、「What’s your partner’s pronouns?」とか言ってますね。ストレートに聞くよりも代名詞を使って遠回しに聞いた方が相手に失礼がないようです。面白い。

私自身は何のひねりもない、ストレートの“女性”という枠に入るのですが、実は幼いころはかなりボーイッシュで、とにかくカッコいいものに憧れて、兄に弟のように扱われるのを喜んでいた時期がありました。

ピンクとかスカートが大の苦手で、髪型もベリーショート。当時から背も高い方でした。幼稚園のトイレでたまに男の子に間違われるのがかなり苦痛だったのを覚えています。

男の子ではない、ということは自覚していましたが、世間一般の考える、女の子らしい女の子でもない…あれ?私って何なんだろう?
幼稚園くらいまではフワフワとしていた疑問でしたが、小学生に上がる際に、その疑問は不安へと変わり、若干6才にして、これは何とかせんといかんと思い立ったのです。

とりあえず、男の子ではないと自覚していたので、そっちの道は途絶えました。だからと言ってピンクの似合う女の子にはなれないし、そもそもなりたくもない。でも今の路線を突き進んで好奇の目を向けられたくもない。。

と、悩んだ末に下した決断は、少しずつカッコいい系の、でも確実に世間からは女の子だと判断されるような雰囲気に路線変更をする、という事でした。

具体的にしたことと言えば、以下の4つくらいでしょうか。
1.髪を伸ばす
2.自分の事を「私」と呼ぶ
3.他人に優しくする
4.新しい洋服に挑戦する

1の「髪を伸ばす」については、本当にそのまま。ショートヘアだから男の子に見られるんだと思い、とりあえず髪を伸ばし始めました。子供らしい単純な発想ですが、はっきり言ってこれが一番効果があったと思います。どんなにボーイッシュな服装でも、言動がわんぱくでも、髪が長いだけで、「女の子」として認識されるようになったのです。それだけ多くの人が髪の長さで性別を判断していることに、子供ながらに驚きました。

2つめの「自分の事を私と呼ぶ」ですが、それまでは自分の事を名前で呼んでいたりしました。周りのお友達が「あたし」を使っているのを聞いて、良いなと思ったのですが、「あたし」って自分には合わないな。と感じていたのです。恥ずかしさもあったのかも。でも目標を「カッコいい女の子」にしたので、「私」という一人称を使えば、大人っぽくてカッコいいのでは?と思ったのが理由です。結果的に自己肯定感がかなり高まったので、これも大正解だったと思います。

3の「他人に優しくする」ってどういうこっちゃ、って感じですよね。笑。幼いころの私は、見かけはもちろん、態度にもかなり乱暴な部分があったのです。兄とはしょっちゅう戦いごっこをして、こぶしの握り方を教わったり、プロレスの技をキメられる日々です。そりゃあ標準の女の子に比べたら多少乱暴にもなります。それに結構偉そうにしていて、お友達とごっこ遊びをする時も自分は王様の役でないとイヤだったりもしていました。どんだけ。

「カッコいい女の子」を目指すにあたり、そういうマインドではダメだと思ったんです。自分で言うのも何ですが、偉そうな態度というのは、なかなか治りません。でも乱暴な部分は意識して出さないようにしていきました。意識するだけで、7歳、8歳の頃ってかなり変わります。もちろん、油断していると、ちょっとした事にカッとなって男子と追いかけっこになったり、大声で言い争いになったり。。

でも小学3年生のころには、随分わんぱく加減が減ったかと思います。幼馴染たちとのバカ騒ぎは相変わらずでしたが、そこに乱暴さはなかったかと。

最後の「新しい洋服に挑戦する」に関しては、これはもはや超長期戦です。書き出すと結構長くなるので、今回は省きます。端的に言うと、「カッコいい女の子」っぽく見える、しかも自分らしい服装を見つけるまでの、長い長い旅です。おそらく大学生くらいの時に満足いくようなスタイルに到達したとは思うのですが、アメリカに来てからは「カッコいい女の子」から「出来るだけズボラに見えにくいインドア女子」に路線が変わりましたので、服装もそれに合わせてかなり変わったかと。。

まぁ…長くなりましたが、何が言いたかったかというとですね、「自分は性別的に何者なのか」というのと「周りからどう見られているのか」というジェンダーアイデンティティに関して、私はかなり敏感な方だと思うんです。

だから、アメリカ人のよくやる赤ちゃんの性別公表パーティーなんかは好きではないし、男の子は青、女の子は赤、という色分けも精神的に無理です。男の子用の玩具、女の子用の玩具なんていうのも大大大反対。

日本はどうなのか知りませんが、ジェンダーに対してかなり寛容的になっているアメリカにいれて良かったと思います。自己主張がしやすいし、それを周りは受け入れてくれます。というより、他人の事は誰も気にしない。。出る杭はそのまま出っぱなし、というか。。

そしてこれまでの人生で学んだのは、周りに決められるのではなく、自分で決めて良い、という事です。

私はどちらかというと、自分がその後の人生を生きやすい選択をしたんでしょうが、もしあの時の私が、当時の自分に全く疑問を持たず本能のまま突き進んでいたら、多分全く別の自分になっていたんだと思います。それはそれで面白い人生になったかもしれませんが…。

もし心も体も男で生まれていたら、多分こんな事を真剣に考えることもなかったと思うので、女に生まれてきて良かったと言えば良かったのかも?

考えてみると面白いもんです。そんな感じです。皆さんはどう思いますか?

さあ、今週は会社でまた新しいメンバーが一人増える予定です。しかも日本人!さてその人はSheなのでしょうか、Heなのでしょうか、それともTheyなのでしょうか?!乞うご期待。

応援クリックをどうぞ!
にほんブログ村 海外生活ブログ ロサンゼルス情報へ